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東京高等裁判所 昭和48年(ラ)772号 決定

抗告人 金井貞次

抗告人 金子敏正

右両名代理人弁護士 池田昭男

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人代理人は、「原決定を取消し、更に相当の裁判を求める。」旨を申立て、その抗告理由は、別紙のとおりである。

記録中の登記簿謄本によると、本件競落不動産については、強制競売申立の登記前である昭和四六年九月一三日抗告人両名のため、同月一〇日代物弁済契約に基づく停止条件付所有権移転仮登記(持分各二分の一)が経由されていることが認められるが、抗告人等の右仮登記が債権担保のためのものであることは、抗告人等の主張じたいに徴し明らかなところであるから、抗告人等が、その主張のように、昭和四八年六月三〇日条件成就によって右不動産の所有権を取得したとしても、その本登記を経ないうちに、他の債権者の申立により強制競売手続開始の決定がされた以上、抗告人等は、担保権者として配当要求の方法により優先弁済権を主張し、その満足を計ることができるにすぎず、差押債権者に対して右仮登記の本登記手続をするについての承諾を求め、その執行を全面的に排除することは、できないものといわなければならない(なお、このような場合において競落人は、抗告人等の本登記手続に対し承諾の義務があり、その結果、一旦競落によって取得した右不動産の所有権を失うことになる、という解釈をとるとしても、それによる不利益の危険は、競落人の甘受すべきところであり、その故をもって、右事由が競落許可決定を取消すべき理由となるものではない。)。

また、抗告人等がその主張のような訴を提起しても、それに伴う強制執行停止決定を提出しない限り、執行裁判所として執行手続を停止すべきではなく、停止決定の許否を廻る争いは、受訴裁判所の決すべきところであって、執行裁判所の関知するところではない。従って、原審である執行裁判所が競売手続を停止することなく、競落許可決定に及んだことに何等の違法はなく、その他記録を精査しても、原決定には、これを取消すべき違法な点は認められない。

よって、本件抗告は理由がないので、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 寺田治郎 裁判官 福間佐昭 宍戸清七)

〈以下省略〉

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